現代夫婦の新しい生活スタイルとして、度々話題になっている「別居婚」。
女性の自立や「個」を尊重する文化が浸透するとともに、別居婚を選ぶ夫婦は増えています。
しかしこれまでの”当たり前”とは異なる選択肢のため、さまざまな不安や疑問を抱える方が多いのも事実。
そこで今回は、別居婚について詳しく解説します。
メリットデメリットを踏まえてお伝えしますので、どうぞ参考にしてみてください。
別居婚とは?
別居婚の意味とは、入籍後の夫婦が同居せずそれぞれの家を持ち、別々に生活を送ること。
互いの生活を尊重しよい夫婦関係を築くための、前向きな選択であることが前提です。
似たような夫婦の形として「単身赴任」がありますが、仕事の都合でやむ負えず別居しなくてはならない状況を指しているため別居婚とは異なります。
別居婚を選ぶ夫婦の割合は増えており、2021年8月実施の『別居婚に関するアンケート』では、10〜20代の未婚女性で42.5%の方が「別居婚をしたい」と回答しました。
引用:【(10-20代未婚者対象)別居婚に関するアンケート】|株式会社SheepDogのプレスリリース
次世代の多数が支持する別居婚は、近い将来マイノリティではなくなるかもしれません。
また、別居婚のスタイルで週末だけ会う「週末婚」や、互いの家を訪ねて数日生活する「通い婚」もあります。
芸能界で活躍する夫婦にも別居婚を公表するケースが増えていて、新しい価値観を後押ししていますよ。
別居婚は意味ない?別居婚をする理由は?
別居婚を望むなら、そもそも結婚する意味ないのでは?
確かにカップルの時と一見変わらないですよね。別居婚をする理由をみてみましょう。
①住みたい場所が違って遠距離になる
別居婚を選ぶ理由の1つ目は、もともとの住む場所が遠距離だったということ。
遠距離恋愛から結婚すると、仕事の関係ですぐに同居できないといった問題が出ることも。
そういった夫婦は入籍後に期間を決めて、別居婚をすることがあります。
また遠距離に限らず互いの生活や通勤の利便性を考慮して、近距離・中距離で別居婚をする場合もあるでしょう。
互いの住みたい場所や都合を尊重して別居婚を選ぶのは、かしこい選択かもしれません。
②結婚しても自由に暮らしたい
結婚しても自由な暮らしを望むことが理由で、別居婚を選ぶこともあるでしょう。
とくに他人との同居に不自由さを感じる方は結婚後徐々にストレスを溜めてしまい、ふたりの関係に悪影響を及ぼす可能性が考えられます。
むしろこういった懸念から独身を貫いてきた方も多いのではないでしょうか。
別居婚なら大切なパートナーとの人生を選択しながら、自由な暮らしを存続させることができます。
離婚せずに夫婦生活を手放す「卒婚」とは別です。別居婚は、別居しながら夫婦として一緒に人生を歩むことが前提ですよ。
③お互いが自立している
別居婚の理由として、お互いの自立した生活を続けるためであることも考えられます。
基本的には円満な別居婚をするなら、それぞれが自分の生活を成り立たせていることが大切です。
したがってふたりが経済的にも精神的にも自立している場合は、自然と別居婚を選択してもおかしくありません。
日本の初婚年齢は上がっているので、一人暮らしが長い方も多いはず。結婚しても互いに十分な時間や余裕があれば、パートナーを尊重できメリハリある生活になるでしょう。
別居婚は違法?
別居婚って違法にはならないの?
違法ではありません。法律上は何の問題もないため、安心してくださいね。
結婚に関する法律の民法752条には「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と明記され、同居することが一般的な考え方です。
ただし条文に反したからといって罰則はなく、国としての基本的な夫婦のあり方を示しているだけなので、それぞれの夫婦の考えが尊重されるでしょう。
ふたりに良好な夫婦関係があるうえで、納得して別居婚をするならば違法にはなりません。
別居婚は最高?メリットは?
先輩夫婦から「別居婚は最高だ」と聞きましたが、実際どんなメリットがあるの?
別居婚ならではのメリットを3つ紹介しますね。人によって向き不向きがあるので、以下の項目にメリットを感じられるか一緒にチェックしてみてください。
①仕事や趣味に没頭できる
別居婚の大きなメリットは、互いに仕事や趣味の時間に没頭できることです。
1人の時間を確保できるため互いに気を使うことなく過ごせ、適宜気持ちをリフレッシュすることも可能。するとふたりで過ごすときは、より最高な時間を共にできるはずです。
同居する場合はふたりの生活パターンを揃えなければ、どちらかに負担や我慢が大きくなり夫婦関係がうまくいかなくなることもしばしば。
必然的に仕事や趣味を制限する必要がでてきます。
自分のキャリアの中で頑張り時なタイミングや、子供ができるまではバリバリ働きたいという場合、別居婚は人生計画における有意義な選択肢になるでしょう。
日常生活や食事のこだわりが強い方も、別居婚ならストレスが溜まりにくいですよ。
②ずっと新婚気分でいられる
別居婚は、入籍後も新婚気分を長く継続できるというメリットがあります。
一緒に過ごす時間をあえて制限することで、馴れ合いにならず新鮮な気持ちを保てるからです。
同居すると互いに相手への理解が深まったり毎日一緒にいれる幸せを感じる一方で、悪い部分が見えすぎたり新婚当初の気持ちが薄れてしまうケースも少なくありません。
結婚してもドキドキした気持ちを保ちたい夫婦は、別居婚を選べばいつまでも恋人気分を味わうことができます。
③お互い実家暮らしなら親の介護がしやすい
お互いに実家暮らしのまま別居婚をするパターンもありますが、この場合両親の介護をしやすいというメリットがあります。
結婚する年齢によっては、すでに親の介護の心配が頭に浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
親と離れて暮らすと介護が必要になった際、すみやかに生活拠点を移す必要があり大変ですよね。
介護を理由に結婚できないと悩んでいる方は、別居婚で両立できるかもしれません。
お互い実家での別居婚は、妻が妊娠した際も親に助けてもらうことができますので、授かり婚の夫婦にもメリットが大きいですよ。
別居婚はうまくいかない?デメリットは?
別居婚は従来より自由なスタイルだとわかったけど…うまくいかないケースはないの?
もちろんメリットデメリットは両方あります。別居婚でうまくいかないと感じる3つのデメリットを紹介します。
①離婚率が高くなる
別居婚は一般的な結婚に比べ、離婚率が高くなることがデメリットです。
2021年9月実施の家庭内別居に関するアンケート調査を参考としてご紹介します。
今回の調査では家庭内別居をした後の離婚率は83%という結果となりました。特に女性は91%とかなりの高確率で離婚に至っていて、やはり家庭内別居のまま夫婦関係を継続するのは簡単ではないことが伺えます。引用:家庭内別居の割合って!?「きっかけ」「期間」「男性・女性の心理」「離婚率」について徹底調査|ノマドマーケティング株式会社のプレスリリース
この調査は「家庭内別居」を対象としており夫婦関係が破綻している状況ですが、顔を合わせない生活が離婚を助長させていると考えられるでしょう。
別居婚は互いの時間を尊重できる一方で、万が一浮気や気持ちが冷めるなど相手に変化があった場合、気付くのが遅くなりうまくいかないことも。
ただしまめに連絡をとり顔を見て話す時間を大切すると、離婚の心配は少なくなるのではないでしょうか。
別居婚は相手が見えない分、信頼関係がより必要不可欠。別々に暮らしていてもきちんと関わっていくことが、幸せな別居婚のポイントですよ。
②生活費の負担が大きくなる
別居婚はふたりの住む場所が別のため、生活費の中で大きな割合を占める家賃が倍になります。
さらに自炊せず外食が増えたり互いの監視がないことで浪費が増えたりと、お金の管理が難しいのです。
別居婚でも生活費を抑えるためには、事前にどのように家計のやりくりをするか、どちらがどの費用を負担するかを話し合いましょう。
あらかじめしっかり決めておくだけで、安心して別居婚をスタートできますよ。
お互いに経済力を持っている夫婦は、お金の問題が少ないため別居婚に向いています。
③周囲から反対されることも
別居婚を周囲に話すと、まれに反対されることもあるでしょう。
近年少しずつ認知されてきましたがまだまだ一般的な考え方には及ばず、ふたりの間に子供がいればより反対の声は大きくなりがち。
世間体が気になるタイプの方は、あえて周囲に公表せず身内や親しい友人のみに話すとよいかもしれません。
別居婚の手続きの方法は?
別居婚の手続きは結論からいうと特別な方法はありませんが、法的な手続きなので不安に思う方も多いでしょう。
ここでは具体的な手続き方法を解説しますので、参考にしてみてください。
婚姻届で特別な手続きはある?
別居婚夫婦の婚姻届で、特別な手続きはありません。
別の住所を書いても問題ないためご安心ください。
婚姻届の具体的な書き方は、以下を参考にしてみてくださいね。
▼別居婚の婚姻届の書き方
住所 | それぞれの住所を別々に記載する |
---|---|
世帯主 | 1人暮らし:自分の名前 実家暮らし:実家の世帯主(父・母など) |
新しい本籍 | 夫婦の新たな本籍地を1カ所決める ※片方の住所や実家にすることが多い |
同居を始めたとき | 同居しないので空欄で提出してOK |
住民票の手続きは?
別居婚では住民票の手続きはありません。
住民票の手続きが必要なのは住所を移したタイミングなので、別居婚と共に引越ししないのであれば住民票を変える必要はないでしょう。
婚姻届を出すだけで、新しい氏名や本籍などは住民票に自動で反映されます。
扶養に入るのは可能?
別居婚は妻が夫の社会保険の扶養に入ることは可能です。
- 妻が無職
- 妻の収入が130万円未満
上記いずれかに該当する場合は、夫の社会保険の扶養に入ることができます。
夫の収入を軸に別居婚する場合は、扶養に入った方がお得ですね。
別居婚は手当はつく?
結婚に関する手当はたくさんありますが、別居婚も手当はつきますか?
同居が条件の手当はつきませんので要注意ですよ。入籍前にあらかじめチェックしておきましょう。
▼別居婚に関する手当一覧
家賃補助手当 | 同居が条件の場合は対象外 |
---|---|
単身赴任手当 | 基本的には対象外 (会社の規定によるので要相談) |
遺族年金 | 場合によっては対象外になる |
国民健康保険 | 住民票の住所ごとに請求される |
離婚の財産分与 | 基本は同居期間しか対象にならない |
ちなみに遺族年金は夫婦の間に「生計同一関係」がある事が条件ですので、別居の理由によってはもらえない可能性があります。
万が一離婚した場合の財産分与も、同居していなければ「それぞれが自分で生計を立てて財産を獲得した」ということになり財産分与の対象外になる恐れも。
同居が基本的な考え方として浸透している以上、知っておかないと後で金銭トラブルになることも考えられます。
手当のデメリットも考慮してふたりでご検討ください。心配な方は、結婚前に一度弁護士さんに相談してみましょう。
別居婚の注意点は?
別居婚で幸せな結婚生活を送るためには、いくつかの注意点があります。
後悔のない選択となるよう適度なルールを決め、良い関係を築きましょう。
①会う頻度・連絡頻度をあらかじめ決めておく
別居婚の注意点で大切なのは、会う頻度や連絡頻度をあらかじめ決めること。
連絡なしで会わない状況が長く続けば、お互いの関係性や気持ちが離れてしまい健全な別居婚とはいえません。
事前にどうやってコミュニケーションをとっていくか、ふたりで話し合い最低限のルールを設けるとよいでしょう。
話し合いのポイントはこちらです。
- 会う頻度(週1回/月2回 など)
- 会う場所(家を行き来/中間地点 など)
- 連絡頻度(毎日◯時/起床時/帰宅時 など)
- 連絡手段(LINE/電話/テレビ電話 など)
- 必ず会う日(誕生日/記念日 など)
ルール決めは面倒に感じたり、信頼関係があれば不要と考えるかもしれませんが、なあなあで別居婚をはじめるのはNGです。
また、遠距離で別居婚をはじめる夫婦は会う度の交通費の問題もありますので、可能な限り近くに住むことを検討してもよいかもしれません。
②別居婚をいつまで続けるか話し合う
別居婚は期間を決めて、いつまで続けるか話し合うことも注意点のひとつです。
- 子供が生まれたら
- 子供が◯歳の誕生日になったら
- 今の仕事が〇〇まで進んだら
- ◯年◯月◯日まで
期間を決めるポイントは、具体的な数値や事実をもとにすることです。
例えば「仕事が落ち着くまで」と決めた場合、当事者にしかわからない感覚的な判断が必要になるため、待っている側は終わりが見えずトラブルにつながる可能性も。
なんとなく長引くことを避けるためにも、明確な期間を決めることがおすすめです。
まとめ
今回は「別居婚」について詳しく解説しました。
- 別居婚とは入籍後夫婦が別々の家で暮らすこと
- 夫婦関係を良好に保つための生活スタイル
- 別居婚は違法にはならない
- 別居婚の特別な手続きはない
- 通常通り社会保険の扶養もOK
- 各種手当てはあらかじめ要確認
別居婚とは、今の時代背景にマッチした「新しい夫婦のあり方」です。
まだ理解されにくい部分もありますが、今後少しずつ世の中に浸透しひとつの選択肢となるはず。
迷っている方はこの記事を参考に、ふたりにとって最良の夫婦スタイルを見出してください。
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